《Word/2》



『トモダチ、だろ?』
 ───絶望の淵から、一瞬でも引き上げてくれたのは、その言葉。

 もう二度と、彼の口から聴くこともないと思っていたその呼称。
 再び、そう呼んでくれて。自分が、どんなに。

 ………ちゃんと、聞いてたよ。
 うれしくてうれしくて。自分は、言葉も返せなかったけど、涙も流せなかったけれど。


 本当に、うれしかった。


 もう、『変わって』しまったんだ。

 無理やりジェノバ細胞(ちがうもの)を体に入れられて魔晄を浴びせられて、肉体を侵され、精神を侵され。──…次第におかしくなっていくのがわかり。

 だから、もう、
 …───すごく、遠くなっていくような 気がした。


 壊された精神(こころ)。過ぎゆく時に置き去りにされて。

 ………ザックスが、離れていってしまう。
 追うことも、今の自分には出来ない。
 身体が動かない───動けない。

 離れていく好きな人。たったひとり残される。
 …──置いていかれる不安。寂しくて、悲しくて。

 ───そんな時に。
『……放っていったりしないよ』。
 …──そう言ってくれたから。


 その言葉に、どんなに自分が安心したか。
 譬え嘘でもいい。その言葉だけにすがった。いつもみたいに裏を探るのも忘れて、貪欲に、どん底の精神は。
 今、聞こえる、───その声音、言葉だけにすがりついた。

 それは闇の中、射し込んだ一筋の光のような。
 掴むことはできないそれ。けれどそれは唯一の希望になる。

『……放っていったりしないよ。トモダチ、だろ?』
 ………その言葉に、どんなに自分が救われたか。
 目に見えない心の傷は、形のない言葉に癒される。




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