《Word/5》



「怒ってるだろ?」
「───怒ってねえって」

 そんな、ウソだ。自分はあんなひどいことをしたのに。
 一人で逃げて。あんたを置いて。弱くておかしくなって迷惑かけて───……!



 ───その存在すら、忘れて。



 あんなひどいことをしたのに、してきたのに、こんな最低な奴なのに。いくらあんたがお人好しでも、もう限界越えてるはずだ。許してもらえるはずがない、許してもらおうなんて思ってない。そんな虫のいいこと考えていない。どんな非難をされても、一生縁を切られても、おかしくないと思っていた。

 ───それなのに、どうして、あんたは。

「全然、怒ってなんかねーよ」
 抱き寄せる腕。耳元で囁かれる許し。
「………また会えてよかった」
 甘い言葉。
 ───どうして、どうして。疑いながらも、その懐かしい温もりの中から抜け出せない。肩を抱く腕と、温かい胸板の感触に埋もれるように目を閉じた。
「………本当に、よかった」
 ザックスが、言う。

 ───『本当に』───。………その言葉は、呪文のように。

「………」
 言葉の奥なんて、見えない。
 心の目をいくら凝らしても判らない他人の本心。



 ならばもう、目の前にあることだけを信じよう。



 目に映る笑顔だけ。
 耳に聞こえる言葉だけ。
 感じる温もりや優しさだけを。

 疑わずに。───信じよう。

「………ごめん」
 そしてそれに応える。深く考えなくていい。素直な気持ちをそのまま外に出せばいい。見せればいい。
 ───偽らずに。相手がそれを信じてくれなくても。自分は偽らずに。
  他人が自分を信じてくれているかなんて、そんなものも、真実わからないから。

「………ああ」
 抱く腕に力がこもる。……ザックスは信じてくれたんだろうか。
 ───わからないけれど、信じるんだ。今、自分にとって、頷いた彼の返事だけが、腕にこもった力だけが真実だから。






 ここに、二人、こうしていられる。
 ──……それだけで、いいじゃないか。







「……ありがとう……」
 クラウドは、その胸で少しだけ 泣いた。




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...So darlin' darlin' stand by me
Oh stand by me
Oh stand.. stand by me stand by me